【3回戦】鹿児島実-倉敷工(1996年全国高校野球選手権大会)

1996年8月18日 8:30 阪神甲子園球場

  1 2 3 4 5 6 7 8 9
鹿児島実 0 1 1 3 4 0 0 0 0 9
倉敷工 0 0 0 1 0 0 0 0 1 2

【投手】

鹿児島実:下窪、鍛冶屋 - 林川

倉敷工:諏訪、中原、笹田 - 福原

▽三塁打:川田(鹿)

▽二塁打:宮田、下窪(鹿)

試合時間:2時間38分

観衆:4万5千


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出場選手

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鹿実打線火噴き9点

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倉敷工にスキ与えず

鹿児島実の打線が11安打と火を噴き、果敢に足も絡めて中盤までに大量リード。投げては下窪、鍛冶屋の続投で倉敷工打線につけ入るスキを与えなかった。

鹿実は二回一死、和気が三遊間安打。二死後、宮田が左中間に二塁打を放ち先制した。三回は先頭の川田が左越え三塁打。続く田上の左犠飛で1点加えた。ペースをつかんだ四回は下窪の二塁打に敵失や暴投などで3点を加え、五回も林川、下窪の連打に、和気の犠飛や鍛冶屋の適時打などで一挙4点を奪いダメを押した。

下窪は四回に死球と福原の中前適時打などで1点を失ったが、五回を投げて与四死球2、被安打3。代わった鍛冶屋も九回に下位打線の3連打で1点取られたものの、コースを丁寧に突く投球で倉敷工の追撃を断ち切った。

狙いドンピシャ

確実に3犠打を決めていたものの鹿実レギュラー陣で唯一無安打だった岩切信哉が四回、中前にクリーンヒットを放った。「狙っていたスライダーが真ん中に来た。タイミングはドンピシャリ」と打撃好調のチームに乗り遅れていただけに、本当にうれしそうな表情。しかし、七回に平凡なゴロをはじくエラー。「待ってしまった。思い切り出れば、さばけたのに」と反省していた。

予想外のミス続出

倉敷工の和泉監督にとっては予想外の守りのミスが続出した。

鹿児島実の四回一死三塁の場面。二ゴロを捕った西川が本塁に送球したが、福原が落球して3点目を与えた。さらに二死一、二塁から諏訪が暴投。一塁走者までが本塁に突っ込んできた際に、ベースカバーに入った諏訪が落球して5点目を許してしまった。

(南日本新聞)



攻勢の口火切る左前打

【鹿児島実-倉敷工】5回表、鹿児島実無死二、三塁、和気が左犠飛で三走林川をかえす =甲子園

追加点もおぜん立て

 

鹿児島実は立ち上がり、予想しなかった倉敷工の先発投手に自慢の上位打線が無安打に抑えられた。しかし二回一死、六番に座る背番号14の和気隆浩が左前へ鮮やかなライナーを放った。「ストレートに張って、球に逆らわないように打った」

そして、鍛冶屋の三ゴロで二進。宮田の2球目に捕手が投球をはじく間、果敢に三塁を陥れる。その4球後に宮田の適時打が飛び出し先制のホームを踏んだ。四回は二塁打の下窪をバントで進め追加点のおぜん立て。五回は左犠飛で交代直後の相手エースの出はなをくじいた。

センバツでは背番号9、決勝は5番を任されたが、春の九州大会以後、調子を落とし、レギュラーから外れた。甲子園初戦では先発出場のチャンスが回ったものの、バント失敗など内容が悪く、最終回に代打。「悔しかった」

背番号9の吉村の負傷で途中出場した次戦も、結果を残せずじまい。しかし「吉村の分まで頑張る」と燃えた3回戦は、地味な仕事を忠実にこなし、打順を上げた久保監督の期待に見事こたえた。「次も下窪を楽にする展開になるよう、チームに貢献したい」。今後も渋い働きが楽しみだ。

(南日本新聞)



下窪-鍛冶屋好リレー

【鹿児島実-倉敷工】4回表、鹿児島実2死一、二塁、倉敷工バッテリーの乱れで二走鍛冶屋に続き、一走岩切もかえる =甲子園

随所に「春の王者」の風格

 

鹿児島実は序盤から攻守にはつらつとプレー。甲子園3試合目にして、投打のかみ合ったセンバツ覇者の風格を見せつけた。

二回に先制すると、三回は川田を三塁に置き田上がきっちり犠飛を上げるソツのない攻撃で加点。守りではその裏、下窪は巧みなけん制で一走を刺殺、ピンチの芽を摘んだ。

四回には、相手のミスにつけ込んだ好走塁が際立った。

一死三塁で鍛冶屋は二ゴロ。下窪は本塁を狙いクロスプレーに。しかし闘志が捕手の落球を呼んだ。「タイミングはアウトだったが、内野ゴロならいくつもりだった。」さらに暴投。鍛冶屋は「自分の判断」で二塁からかえった。本塁カバーに入った投手のエラーもあり、一走岩切も一気にホームを陥れた。

「ぎりぎりのところで手を回すから、相手に負けない気迫で走って」。前日、練習後のミーティングで話した柴田三塁コーチャーの意思は生かされた。林川主将は「ああいう場面の走塁はいつも練習している」と当たり前といった表情。

5点をもらった下窪は、その裏1点を失ったもののテンポよく投げ鍛冶屋に引き継いだ。「下窪を休ませ、鍛冶屋に登板経験させる願ってもない好機だった」と久保克之監督。初回、バント失敗に追い込んだ松下の素早い前進を「攻撃的ないい守備」と評価、試合運びについても「全体に引き締まってきている」と手ごたえを感じた様子だった。

倉敷工の北条主将に「しつこさはヘビのようだった」と言わせた鹿実ナイン。対して林川主将は「脅威を与えられるのはいい」。強気に胸を張る姿は、チーム状態が上向きであることを感じさせた。

(南日本新聞)



マウンド楽しめた 鍛冶屋

【鹿児島実-倉敷工】6回から登板し好投した鍛冶屋 =甲子園

鹿実の鍛冶屋がエース下窪を好リリーフ、甲子園初のマウンドを堂々と務め、四イニングを1失点に切り抜けた。

登板指令は五回終了後。下窪から「思い切って投げれば打たれない。落ち着いていけ」と励まされてマウンドへ。直球を主体にカーブやスライダーを左右に散りばめ、被安打3の好投。「緊張はなく、むしろマウンドは楽しかった」

春の九州大会では波佐見(長崎)戦に先発、五回を投げて3点を失い敗戦投手になっている。その後の公式戦登板は、夏の鹿児島大会3回戦でのわずか二回だけ。それでも、春以降身に付けた制球力で「最後まで投げきる自信があった」。満を持しての登板で強気のピッチングが奏功し、ニコニコ顔だった。

投球に自信取り戻す

鹿実のエース下窪が2回戦に続いて3安打2打点の活躍を見せた。「ただ振ったら当たっただけ。こんなに打てるとは」と本人も驚いている様子。

ピッチングも1、2回戦より制球が安定。外角低めの変化球や内角高めの直球を組み合わせ、倉敷工の強力打線をねじ伏せた。「肩の調子はよく直球が走っていた。春を十とすれば七、八くらい」と自信を取り戻した様子。点差が開いた六回から鍛冶屋にマウンドを譲り、左翼の守備へ。「絶対抑えてくれると思っていた。外野から見ている分には楽だが、自分が投げないと心配」と冗談も飛ばしていた。

(南日本新聞)



ひとこと

  • 鹿児島実・久保克之監督:中原投手の外角の球を狙うように指示していたが、二番手投手が先に登板してくれて助かった。下窪は三回から球が走っていた。
  • 倉敷工・和泉利典監督:中原は肩慣らしさせた後、交代させるつもりだったがその時機を逸してしまった。四、五回のエラーは起きるはずのないもの。これが甲子園なのかと思った。
  • 鹿児島実・林川大希主将:先発はエースが出てくると思っていたので戸惑いはあったが、早い回に点が取れたので、波に乗って自分たちのスタイルを貫くことができた。下窪、鍛冶屋とも投球内容は良かった。
  • 倉敷工・北条剛主将:選抜優勝チームということは意識しないようにしたのだが、プレーに出てしまった。観衆も多く、練習では出ないミスがあり、取るべきところでアウトを取れなかったことが敗因。
  • 下窪陽介投手:調子が良くて、思い切り投げられた。ここまで来たら気持ちの問題。一戦一戦、目の前の敵を倒すのみ。
  • 川田浩之一塁手:(フェンス直撃の)三塁打は意外と伸びた。打撃は練習ではいいが、調子はいいのか悪いのかわからない。
  • 岩切信哉二塁手:(一塁から相手ミスで一気に生還)思い切りいこうと思って、柴田さん(三塁コーチ)を見るヒマもなかった。
  • 松下友昭三塁手:2、3本打ちたかったし、守りで取れるボールを捕れなかったりして、納得できるプレーが出来なかった。
  • 宮田典幸遊撃手:1打席目は「自分が絶対打つ」と気合が入っていたので、タイムリーが打てて、とてもうれしかった。
  • 鍛冶屋直人左翼手:(春の九州大会で負け投手になった)波佐見戦のことは忘れた。ヒットも出て、気分良く投げられた。
  • 田上智之中堅手:全体的に走塁が良かった。自分自身も盗塁を二つ決められ満足。ミスを全員でカバーし合い、次も勝ちたい。
  • 和気隆浩選手:初戦は欲を出して自分も生きようとしたバントが失敗。今回はいいところに転がすことだけ考えていた。
  • 吉村光広選手:一塁コーチとして大きな声を出して的確な指示ができた。ベンチの雰囲気は良かった。
  • 黒瀬淳選手:大量点が取れ自分たちのペースで試合を運べた。大差でも気が緩むことはなかった。
  • 柴田大輔選手:(三塁コーチで)際どいときは突っ込む指示を出した。みんなの気迫が好走塁を生んだ。
  • 新屋勝利選手:序盤に点が取れたので安心して試合を見ることができた。声も良く出ていた。
  • 本村敏幸選手:投打がかみ合ってチーム内が盛り上がってきた。この調子で次も勝ちたい。
  • 内倉大作選手:チームはいい感じで点数が取れたので、今の調子を持続して準々決勝に臨めれば。
  • 久保裕二選手:(代打出場で二ゴロ)詰まった。次の試合も絶対出場して、今度こそ打つ。

(南日本新聞)

 


鹿児島実5回で9点と圧勝 余裕の2番手・鍛冶屋

【鹿児島実-倉敷工】4回表2死一、二塁で倉敷工の諏訪(右)が暴投。二走・鍛冶屋が一気にホームへ飛び込み4点目をあげた=甲子園

【鹿児島実-倉敷工】5回表無死満塁で鹿児島実の5番・下窪が一、二塁間を破る2点タイムリー。投打に大活躍を見せた(投手・諏訪)=甲子園

相手のミスをついてソツなく攻めた鹿児島実の圧勝だった。2回に宮田の左中間二塁打で1点を先取した鹿児島実は3回、川田の二塁打と田上の犠飛であっさり加点。4回は二塁打とバントで三進の下窪が二ゴロで本塁に突入、捕手の落球を誘い、さらに岩切の安打で2死一、二塁から倉敷工の先発・諏訪が暴投。二塁の鍛冶屋に続いて一塁走者の岩切までが本塁に走り込むと捕手からの送球を諏訪が落球、3点目を奪った。

さらに5回にも内野の乱れに乗じて無死満塁とし、下窪の右前2点適時打。代わった中原から犠飛と内野ゴロで計4点をあげて突き放した。

倉敷工は4回、福原の適時打と9回2死後3連打して各1点をかえすのがやっと。鹿児島実は6回から鍛冶屋を救援させる余裕で勝ち進んだ。 

(報知高校野球) 


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